いとまの方法
2022/5/3〜8
10:00〜17:00

取り壊し予定の児童養護施設園舎が舞台のアートプロジェクト

杉並学園アートプロジェクトは、建て替えのため取り壊しが決まった、約50年の歴史を持つ児童養護施設園舎を舞台としたアートプロジェクトです。
施設の歴史と記憶を掬い上げるアーティストたちの作品と、施設の子どもたちがワークショップを通して制作した作品が併せて出展され、企画展「いとまの方法」として結実しました。

Artists

安部寿紗 / 泉里歩 / 木村桃子 / 西村卓 / 深浦よしえ / 堀江和真 / 三田村光土里 / ゆにここ / 吉川陽一郎

Outline

いとまの方法 : 杉並学園アートプロジェクト

会期2022年5月3日(火・祝)-8日(日)
10:00-17:00(最終入場16:00)
会場児童養護施設杉並学園(東京都杉並区宮前3-10-8

Concept - いとまの方法

 児童養護施設である杉並学園は、約九十年の歴史を持ち、現在の園舎が建設されてから数えても五十年以上の月日を同じ場所に建ち続けてきました。たくさんの子供たちが暮らし、職員や支援者が過ごし、交差してきたその園舎が、2022年に解体されます。老朽化のため、2024年の竣工を目指して建て替え工事が始まり、その間、施設の機能は近隣のグループホームに分散されるとのことです。いま暮らしている子供たちの生活や施設の歴史、地域との関係性は、約二年の間、一時的にその場を明け渡します。

 本企画「いとまの方法」は、その「いとま」となる期間を単なる空白でなく、意義深い節目にするためのプロジェクトです。多くの人が住まい、関わってきた建物には、たくさんの記憶と歴史が織り込まれ、蓄積されています。「学園」や「施設」といった言葉が覆い隠してしまいますが、そこは「家」であり、たくさんの人にとっての帰る場所でした。そこに日々降り積もり、滞留してきたものを拾い上げ、眺め、一旦の別れを告げる機会をつくるのが本展の目的となります。

 思い出と呼べるものには、単なる出来事の叙述だけでないさまざまな情報が絡みついています。ある出来事が記憶として定着し、感情を織り込んだ思い出として昇華されるまでには複雑なプロセスが必要で、その過程を経る間に、その出来事にとっては副次的だったはずの情報――たとえばその時の匂いや天気、気温、着ていた服、流れていた音楽――がいつの間にか結びつけられていくのです。そしてひとは時に、むしろその瑣末な細部にこそ思い出の真意を仮託します。匂いから記憶を思い起こすことがあるように。

 本展を通して、美術作品はこの施設に関わってきた人々の記憶に触れ、刺激し、思い出が編み上げられていく過程にポジティブに介入することができるでしょうか。重要な細部のひとつとなるアンカーを打つことができるのか、その方法を模索します。

上久保直紀(企画・キュレーション)

閉幕後レビュー

閉幕後に企画者が振り返りながら執筆したレビューが、下記リンクよりご覧いただけます。

謝辞

企画実施にかかる費用について、クラウドファンディングを実施しました。
ご支援いただきましたみなさまに深くお礼申し上げます。

主催一般財団法人カルチュラルライツ / 社会福祉法人光明会杉並学園
後援杉並区 / 杉並区社会福祉協議会